「ごちそうさまでした」


どれもすごく美味しいんだけど

食欲がわかなくて少ししか食べられなかった。


“ごちそうさま”をした私が次に向かうのは自分の部屋の隣の部屋。


階段を上がってすぐの部屋で

ドアを開けても物はほとんどなくてガランとしている。


そんなこの部屋で異様な存在感を放っているのが、仏壇。


おじいちゃんのでもおばあちゃんのでもなくて、

私の双子のお兄ちゃんが眠ってる。


3年前の4月、明日から中学校に通うって日に事故に遭って

1週間後に亡くなった。


本当なら、勉強を頑張って合格した私立中学に通うはずだった。


勉強ができて性格も良くて顔も整ってて運動もできて

私とは全然違う、お母さんの自慢の息子。


そんなお兄ちゃんを失ったお母さんは

今では私のことを名前で呼ぶことをしなければ

目を見て話すこともしてくれなくなった。


“名前に羽なんて入れなきゃ良かった”


お兄ちゃんのお葬式の日、そんなことを言われた気がする。