「編入生の受け付けはこちらでーす」
多分、生徒会の人たちだと思う。
門をくぐって入ってくる人たちに向かって
図書館の前から声を張り上げている。
私は昨日、担任になる矢野先生から
図書館の場所を教えてもらってたから
迷うことなくまっすぐここにやって来れた。
「あの・・・」
「あ、編入生の方ですか?」
「はい」
ふと相手の名札に目をやった。
まっすぐ入ってくる“山本”という文字。
昨日呼んだ去年の挨拶がよみがえってくる。
“山本翼”さんじゃないよね、まさかね。
「おめでとうございます。
中に入って待っててくださいね」
優しい笑顔で言われて、
私は反射的に頷いて図書館の中へと入った。
どうして“山本翼”って名前に反応してしまったのか、
それは自分が一番よく分かってる。
ただ、私はまだそれを認めたくない。
認められるほど、まだ私は強くない。



