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「ごめんね。入学式行けなくて」
玄関でローファーを履いていると
見送りに来たお母さんが少し高い声で言った。
私は一瞬動きを止めたけど、
すぐに口角を上げて振り返る。
「ううん、気にしないで。
もう高校生なんだし、帰ってから色々教えてあげる」
「そう?ありがとう。
じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」
「うん!行ってきます」
軽く手を振り玄関のドアを閉める。
まだ新しい表札の“村上”って文字をちらっと見て、
私は学校に向かって歩き出した。
実を言うと、私は中高一貫に入学する気はなかった。
本当は、地元の普通の高校に友達と通いたかった。
だけど、急にお父さんの転勤が決まって
引っ越し先から通えるところで
募集が終わってないところが東校しかなかった。
きっと、周りは中学から一緒の子たちでグループが
今日から既に出来上がってるはず。
辛いけど、3年間の辛抱だ。



