もしも羽があったなら・・・




先輩の言葉に私は言葉を失った。


別にショックだったとかそういうのじゃない。


ただ、ただただびっくりしただけ。


「あ、美羽ちゃん、また明日ね」


「あ、うん。また明日ね」


香苗ちゃんがいつもの言葉をくれたから

私はようやく頭の働きを取り戻すことができた。


香苗ちゃんを見送って、先輩と向き合う。


「嫌だったら良いんだけど、駄目?

乗る電車も一緒な訳だし・・・」


確かに、いつも音楽室で“さようなら”を言っても

また駅で会って一緒のに乗って帰ってる。


だから、帰りも朝と同じ形になるだけ。


断る方が不自然だよね。


「大丈夫です」


私が言うと、先輩は安心したように笑った。