「美羽ちゃん、お疲れさま」


部活の練習が終わり、

合奏で使った楽器を片付けている時だった。


自分の楽器、コントラバスを片付け終わったのか

翼先輩が音楽室に顔を出した。


「あ、お疲れさまです」


私はティンパニを運んでいた手を一旦止め、

一言言ってからまた片付けを再開した。


「美羽ちゃん、この後まっすぐ帰る?」


いつもだったら、私が“お疲れさまです”って返したら

“じゃあ、また明日ね”って帰るのに、

今日はそうじゃなかった。


その変化には私だけじゃなくて

パーカッションの先輩も気付いたみたい。


もう帰ってる中学生の子たちもいたら

やっぱり同じように気付いたのかな。


「はい、片付けが終わったら・・・」


「そっか、分かった」


何か、変。


先輩はそのまま音楽室を出て行ってしまった。