「じゃあね、美羽ちゃん」
「あ、はい」
靴箱で靴を履き替えてから先輩と別れる。
入学式の次の日からこの習慣は続いている。
「村上、おはよう」
教室の近くの階段を上がっていると、
後ろから佐藤くんが来て声をかけられる。
「おはよう、佐藤くん」
最初こそ男子と話すのに緊張していた私だけど
今ではクラスの男子と岡田くん、
それに翼先輩とは普通に話せるようになった。
もちろん、全く緊張しないって訳じゃないけど。
「今日って宿泊研修の班決めだよね。
村上は誰と一緒になるか考えた?」
「うん。男子は分かんないけど
女子は香苗ちゃんと一緒になる約束してる」
今ではクラスのみんなと仲良くできてるけど
やっぱり一番の仲良しは香苗ちゃんだから。
「やっぱり、仲良しだよねぇ。
あー、あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど」
さっきまで笑顔で話してたのに
急に神妙な顔つきになった佐藤くん。
お願いって何だろう。
私は訳が分からず首を傾げた。