「美羽が自分から何かをしたいって言うの初めてかもな」
お父さんの言葉に思わず顔を上げてしまった。
そして、当然だけど目が合う。
「お父さんは、良いと思うよ。
きっと、美羽がしたいことをしたら
翼だって喜んでくれると思うしね」
“翼が喜ぶ”
この言葉は、実はこの家では重要なキーワード。
私が言っても効果はないけど
お父さんが言うと効果てき面。
お母さんの心に“それなら良いかも”
って気持ちを生み出してくれるから。
「そうね。きっとお兄ちゃんも喜ぶわね。
その代わり、絶対にさぼったりしないこと」
良かった、普通の声だ。
お兄ちゃんが喜ぶんだからさぼったら駄目。
お母さんの言葉には首を傾げる部分があるけど
それでも私は部活に入ることができるから良い。
お兄ちゃん。
もしかしたら私、少しずつだけど
お兄ちゃんがいない生活に慣れているのかもしれません。