『明日、16時52分の電車で帰ります』


さんざん迷って、昨日寝る前に太一に

メッセージを送った。


聡子と遥に“一生後悔する気?”って

脅されたからってのもあるけど

やっぱり太一に見送って欲しいから。


「そういえばさ」


朝から問題集を開いている聡子に声をかける。


聡子は返事の代わりに顔を上げて私を見た。


「聡子は好きな人いないの?」


「あー・・・」


顔を赤らめて俯いた聡子に、私は直感的に

“いるんだ、好きな人”と思った。


普段は鈍感な癖に、今はえらく敏感。


「いるけど、もういないんだ」


再び顔を上げた聡子は切ない表情をしている。


まさか・・・。


「お兄ちゃん?」


聡子は静かに頷いた。