私が住むアパートに到着した時には、なんとなくいつもと雰囲気が違うことに気付いていた。


普段の君は、明るくノリのいい性格からか、喋り過ぎるほどよく喋る。


だから何気ない話でも、君と一緒だと時間が過ぎていくのが早かった。



それなのに、なぜだろう?


その日は、歩いている間も、俯き黙ったまま。




……具合でも悪いのかな?


「……千秋?」



様子をうかがってみたものの、ポケットに両手を突っ込み俯く君の表情は、陰っていてよく見えない。




――ドクン……。

ついさっきまで晴れ渡っていた私の心を、不安という名の雲が覆い始める。


広い空はどんよりとした灰色の雲に隠されていて。

そこにはもう、晴れている時の開放感は何処にもなかった。





そして――……。



――ポタリ。


アパートの前に無言のまま立ち尽くしていた私たちの間に、一粒の雨の雫が落ちた時……


ハッと、
何かに気付いたかのように君が顔を上げた。