あのね、千秋。


君は気付いていなかったと思うけど。

仲直りした後、私の部屋の白いソファーに座る君の後姿を、私はよくこっそりと眺めていたんだ。


程よく筋肉の付いた、大好きな君の背中に抱きつく瞬間、


びっくりしたような顔を向ける君。



そんな君が、すごくすごく愛しかったから――。


















――相変わらず降り続く雨の音を聞きながら、私は誰もいないソファーに腰掛ける。

1年経った今でも、君の温もりが残っている気がした。



テレビの電源を入れ、朝一で入れたブラックコーヒーを一口含む。


「……苦っ」


小さな四角の中で、ちょうど流れていた天気予報が今日は一日中雨だと伝えていた。

どうやら台風が接近しているらしい。



「……台風か」


思い出すのは、君との最後のデート。


どしゃ降りの雨の中、傘もささずに帰った、あの真っ直ぐな道――……。