「……ごめん」


耳元で、何度も謝る君。

私は、複雑だった。


謝るくらいなら、来ないで欲しかった。


別れて以来、会っていなかったのに。


いきなり現れて、そんな優しさを見せるなんて、ズルい……。



「千秋、離して」

「やだ」



「離してっ!」

「やだっ!!」


背中に回した腕に、ますます力が入る。


それでも、流れ出した涙で鼻声になりながら私は続けた。




「離してよ……。

梓と、付き合ってるんでしょ……?」


――その瞬間、ほんの少しだけ君の力が緩む。


これが……何よりの証拠だと思っていた。





「……何だよ、それ」

君が、そう言うまでは――……。