時計の針がカチカチと動く。

約束の時間が近付く度、私の心がチクリと痛む。


その時間が、
本当のタイムリミットだから……。






とてつもなく苦いコーヒーを全て飲み終わった後、私はケータイを手に取った。

冷たい指で短いメールを打つ。



sub:Re:明日♪
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ごめん、行けない。




たった一言そう書いて送信完了の文字を確認すると、そのまま電源をオフにする。


真っ暗になった画面に映った自分の泣き腫らした顔を見て、思わず苦笑してしまう。




――さよなら、千秋。

心の中で呟き、私は1年間付けっぱなしだったストラップをそっと外した。


少しでも早く、忘れるために。



窓の外はだいぶ明るくなり、雲の隙間から薄日が射していた。