「秋の長雨って言うじゃん?
だから、秋って感じ」


そんな変てこな理由に、緊張していた私の顔が一気に緩んだ。


なんか面白い人だなって。



だって、秋の長雨だから秋って……。

ちょっと物知りな子どもみたいじゃない?



「ふっ……」


思わず吹き出してしまった私の目に映ったのは、不満そうな表情を浮かべる君だった。


「……何がおかしいんだよ」


両頬を膨らませた顔が本当に子どものようでなんだか可愛らしい。



「……別になんでもないよ。

それより、そっちは?
名前、なんて言うの??」


「オレ?中瀬千秋<ナカセチアキ>」



……そっちのが秋じゃん。

さすがにそれは言わなかったけど。





その後、話聞いてるのか〜と先輩から軽くお叱りを受けた君は、
すまなそうに背中を丸めて前に向き直った。


だけど、可愛いイメージとは裏腹に、その後姿は意外と凛々しくて……


私はそんな君に、一瞬で恋をした。