いつの間にか冷めきっていたコーヒーを飲み干した後、私は家を出て大学までの道のりを歩く。


まだ夏休み中ではあるものの、今日は就活に向けてのオリエンテーションがあるため、三年生の登校は必須だった。



あの別れ以来、サークルにも殆んど顔を出さなくなった私にとっては、かなり久しぶりの大学。


たった10分ほどの距離なのに、足取りが重たいのは、この道にはたくさんの思い出が詰まっているからだろう。




デートの時、家まで迎えに来てくれた君と腕を組んで歩いた道。

帰りだって、必ず送ってくれた。


寒い冬の夜は、君のポケットに繋いだ手を入れて歩いて。

まだサヨナラしたくないからと、いつも途中にある公園のベンチでどうでもいい話で盛り上がった。


忘れたくても忘れられない、君との思い出ばかりが溢れる道。


雨のせいで、地面の色は変わり、公園のベンチも寂しそうに見えた。


雨はまだ、降り続く――……。