テンポラリーラブ物語

 なゆみは氷室と肩を並べて、夜の街の中を歩いていた。

 そういえば土曜日も同じように歩いていたが、あの時は体を密着させて支えられていた。

 酔っていたとはいえ、フラッシュバックすると、自分の失態が非常に恥ずかしい。

 今頃になって、事の重大さを実感してしまった。

 氷室の様子をちらりと見れば、普通に前を見て歩いていた。

 氷室は背が高く、そして肩幅ががっちりとして、スーツの背広がとても形よく映えて見える。

 改めて見れば大人の男という貫禄があった。

 見かけはかっこいい男だった。

 その隣に、色気も化粧っ気もない、髪の短い少年のような女がいると、どうも不釣合いに思える。

 なゆみは急にもじもじしてしまった。

 何考えてるんだろう、私は……

 それを悟られるのが嫌で、無理に笑顔を作り、なゆみは氷室に声を掛けた。

「あの、どこ行きましょう」

「そうだな、またホテルにでも行くか?」

「えっ、それはもう忘れて下さい」

「ハハハハハ、お前はからかいがいがある」

 笑い声と笑顔のせいで、冷たい氷室が急に丸くなったように見えた。