テンポラリーラブ物語

「なんだよ、急に叫んで」

「いえ、その、ちょっと宗教について思い出したことがあって」

「お前、変な宗教に引っかかったなんて言うなよ。最近この辺り、声掛けて会員を増やそうとしている宗教団体があるって聞いたから、気をつけろよ。それは宗教というより、カルト集団だろうな」

「えっ、それってどんなのですか」

「なんでもビデオを見せて、洗脳させるらしいよ。しっかりと感想を言わせて、どこが良かったかってしつこく聞くんだって。そういう事を何度も繰り返すと、それが素晴らしいものに思えてくるらしいから。最後には信じてしまうって訳」

「こ、怖いですね」

「信じさせられるほど、歪む事ってないからな。特にお前みたいなタイプはカモだろな」

「ええっ」

 なゆみは顔を青ざめた。

 まさか会費を払ったとこがそんなところだったらと思うと怖くなる。

「とにかくだ、ふらふらするなよ。お前は危なっかしいところあるから。それはこの間で充分理解した」

「は、はい」

 なゆみは氷室にまでふらふらしていると言われショックだった。

 ジンジャにも、そして坂井にも言われた。

 急に自信を失くしたように、がっくりと肩を落とした。

 それは一度に背後霊を沢山呼び寄せて、肩に一杯取り憑かれたように祟られたような暗さだった。

「おい、斉藤?」

「はっ、はい」

 氷室に振り返ったなゆみの表情が、急にげっそりとしていた。

 氷室が異変を感じ、何か言おうとしたが、その時他の従業員が出勤してきて水を差されてしまった。

 人が増え、店の中が活気づき、なゆみはミナや紀子と楽しそうに会話を始めたが、なゆみは明らかに何かを背負って暗く陰っている。

 氷室はそれを気にしていた。