テンポラリーラブ物語

 どちらも、相手の出方を先に知りたくて余計にややこしくなってしまった。

 お互い黙り込んで見つめ合ったままになると、また事態は悪化する。

 氷室が意地を張れば、なゆみは折れるしかなかった。

 勇気をもって、勢いで頭を下げた。

「その、あの、土曜日のことなんですけど。改めて、お詫びします。ご迷惑お掛けしてすみませんでした!」

「だ、だから、あれは、もういいって言っただろ。忘れてたよそんなこと……」

 口先を尖がらせてわざとらしかった。

 しかし、氷室は自分が聞きたい事に話を持っていく。

「……で、その後あいつと誤解は解けたのか」

「誤解? そんなの何もなかったです。ただ私が勝手に好きだっただけで、それで世界を作ってしまって、彼にはいい迷惑でした。ジンジャ、優しかったから私を傷つけたくなくて、彼女がいること私に言えなかっただけなんです」

「あのな、彼を美化するのはお前の勝手だが、そういうのが一番傷つけるんだぞ。男というのははっきりという方がいいんだ。中途半端な優しさ程、酷なものはないぞ。それにいいように思われたいと気持ちを曖昧にするのは卑怯者がすることさ。だから二股かけてたんだよ、あいつは」

「二股って…… だから、ジンジャには関係ないことなんです。強いて言えば、被害者です。私が勝手に夢見てただけだから」

「ジンジャ、ジンジャってお前、宗教の神社みたいな響きだぞ。神道を崇拝してどっかの神社にでもお参りにいってこい」

「あっ!」

 なゆみは宗教というキーワードに酷く反応してしまった。