テンポラリーラブ物語

 土曜日の夜のあの後、なゆみはジンジャとどう接したのか。

 それを知りたいながらも、勝手に切れて去っていた自分が子供じみて、そこをまたほじくり返すのが辛い。

 なゆみが普段通りにふるまっているのを見ると、ジンジャと上手く事が収まったようにも思え、自分だけが馬鹿をみたような気になった。

 気持ちのはけ口のように初対面とはいえ、ジンジャに怒鳴ってしまったが、あれにはジンジャに対しての嫉妬も入っていたと認めていた。

 なゆみに思いを寄せられながら、他の女に手を出して二股かけていると思うと、腹が立ってしかたなかった。

 しかも自分よりも若い!

 それを思うとまた腹が立ってくるから、大人げない。

 しかし、32歳のおっさんが若者の前で切れた姿は、このときになって恥ずかしく思う。

 恥ずかしいと言えば、事の成り行きだったとはいえ、なゆみとホテルに入って押し倒してしまったことも後悔の一つだった。

 なゆみの前で虚勢を張った結果が、アレだった。

 あの時、もし理性が負けていたらと思うとどうなっていたか。

 苛立った感情をぶつけ、勢いでなゆみをベッドに押し倒した時、自分でも馬鹿げた事だとわかっていた。

 痛い所を突かれて、無闇に自分の力を誇示して黙らせるやり方は卑怯だった。

 力づくで押し倒して脅迫したとはいえ、一瞬でも氷室自身ぞくっとする部分があった。

 幸い、なゆみが騒がずに落ち着いていたから、はっとして自分も冷静になれたが、一歩間違えればやばかったかもと後になって事の重大さに忸怩たる気持ちになる。

 日曜日はそのことばかり悶々と考え、なゆみのことが気になって仕方がなかった。

 自分がこれだけ気にしているのに、なゆみが何も言ってこないのはどこか不自然で余計に勘繰りたくなる。

 一体あれから何があった。

 控え室からなゆみが出てきたのを、氷室はちらりと一瞥した。

 目が合えば、敢えて逸らし、また再び視線を向ければ、何か言いたそうで言えずにもどかしさを抱えてぎこちなくなる。

 自分が声を掛けられない分、なゆみからの接触を氷室は待っていた。