「ジンジャ、今まで仲良くしてくれてありがとう。ジンジャは本当に優しかった。一緒にいてて楽しかったし、つい甘えちゃったね。私が英会話学校で一緒にいるせいで迷惑とかかけたこともあったんだろうね」

「何を言ってるんだ。あのさ、タフク、一人でなんか勝手に話作って自分の世界に入り込んでるみたいだぞ」

 なゆみははっとした。

 全くその通りだと思った。

「そっか、そうだったのか」

「だから一体どうしたんだ」

「そうだ、ジンジャの言う通りだ。私夢見る夢子ちゃんでした」

「馬鹿野郎! 何ふざけてるんだ。からかうのもいい加減にしろ。お前、酔ってるのか。もういいよ。話が噛み合わないから、また今度な」

 ジンジャはむっとした気持ちとなゆみをその場に置き去りにして、早足で去っていった。

 なゆみはジンジャの後姿を潤った目で見つめた。

 氷室がまず苛立ち、そこから連鎖反応を起こすように伝播して、ジンジャもなゆみも、訳も分からず苛立って、全てが壊れてしまったように思えた。

 ぐっとこみ上げる感情を必死で抑えようと拳に力を入れると、肩に掛けていたリュックについたキティちゃんも宙ぶらりんに、ゆらゆら動いていた。

 視力の良いなゆみなのに、街の灯りがくっきりと見えずにぼやけていた。