テンポラリーラブ物語

 ビルの外に出て、氷室はタクシーがいないか、キョロキョロしていた。

 自分に頼っているなゆみの感触は柔らかく、そして温かさが伝わってくる。

 意外にもその肩は華奢で、女っ気がないと思いつつも、触れているときはやはり女の子そのものだった。

 自分がおっさんだという事も忘れ、心は少年に戻っていく。

 当時自分が本当に少年だった時、氷室は無邪気に恋などした事はなかった。

 その頃、氷室は親との折り合いが上手くいかずに、反抗ばかりしていた。

 早く大人になることを強いられて、勉強ばかりしては冷めて捻くれるようになってしまった。

 顔も頭も良く、ちょうど何もかもうまく行ってたから、傲慢で自惚れるようになっていった。

 それが後に足を引っ張って、いまこうして挫折している訳だが、なゆみが現れてから、再び青春時代をやり直しているような気分にさせられる。

 同じ世代だったらどんなに良かっただろうか。

 この隔たりは中々埋められたものではないと、この年齢のギャップが恨めしい。

 それでも、暫くなゆみを正直な気持ちで見つめつつ、同じ世代を生きるジンジャが憎らしかった。

「そんなに好きだったのか」

 ふと声に出ていた。