テンポラリーラブ物語

 皆は純貴にお礼を言い、奢った方も奢られた方もそれぞれ満足にその宴会は楽しい気分にさせてくれた。

 余韻を残してお開きとなった後、氷室はなゆみのリュックサックを肩に掛け、もう一方のサイドでなゆみの体を密着して支えていた。

 早く歩けないなゆみは、のっそりと動く。

 その間に他のみんなと完全にはぐれ、氷室と二人っきりになっていた。

「氷室さん、トイレ」

「馬鹿やろう、さっさと済ませて来い」

 まだビルの中の通路を歩いており、トイレはすぐ目の前にあった。

 中々すぐにでてこない様子に、氷室は腕を組み、方足を揺らしてイライラして待つ。

 まさか倒れている事はないだろうかと、心配で仕方がなかった。

 暫くしてなゆみが、ヘラヘラと顔を赤くしたまま、トイレの入り口に現れる。

 だが案の定ふらついて倒れそうになっていた。

 氷室は世話が焼けると、駆け寄って支える。

「しっかりしろ。お前らしくないぞ」

「何が私らしくないですか? 氷室さんまだ私のこと何も知らないじゃないですか」

 今度は絡んできた。

「お前、酒癖悪いな」

「いいも、悪いも、私だって、酔いたいときがあるんです」

「わかった、わかった、いいから黙れ。で、お前の家はどこなんだ」

「あっち」

「いい加減にしろ」