テンポラリーラブ物語

「これ、すごく甘くて全然お酒の味しませんでしたよ。喉が渇いていたしおいしかったです」

「だからそういうのが危ないっていうんだ。甘い酒の方がアルコール度は高い」

 どんなに氷室が控えろと示唆しても、なゆみは聞く耳持たずだった。

「まあいいじゃないか、コトヤン。斉藤さん、どんどん飲んでね。次何頼む?」

「おい、純貴、煽るな。コイツ、今日は……」

 そこまで言葉が出かかったが、その後は口をつぐんでしまった。

 口は挟まなかったものの、隣で倉石千恵が何かを感じ取って、氷室となゆみの様子を気に掛けていた。

 料理が運ばれてきた時、なゆみの空のグラスを見た店員は、おかわりを進め、なゆみはまた甘いお酒を注文した。

 飲み物はすぐになゆみの目の前に差し出され、それを一口飲めば、その飲み易さになゆみはすっかりと味を覚えてしまった。

 先ほど飲んだ酒のアルコールがじわじわと体の中を駆け巡り、ドクドクと血が騒いでくる。

 その度に、頭がにょきにょきと上に伸びてるような間隔に陥り、気持ちが大らかになって行く。

 顔も真っ赤に火照り、赤い熟したトマトのようになっていた。

 自分ではまだ酔ってるつもりはなかったが、どうもふらふらとして、体が浮いているような気分がする。

 ミナに大丈夫かと声を掛けられ、テンションの高い声ではっきりと「はい」と返事をする。

 陽気に振る舞うなゆみのその姿は、氷室にはもう出来上がっている様子に取れた。