テンポラリーラブ物語


 一方なゆみは、アメリカの大地に根を下ろすような勢いで、憧れの異文化に順応していた。

 場所や習慣が変わると、過去など振り返ってる暇はないように、常に突き進んでいる。

 なゆみの気持ちに合わせるかのように、南カリフォルニアは11月に入っても、その太陽の眩しさは衰えることなく、からっとした清々しい青空が広がっていた。

 青い空を見ていると気分も晴れてくるように気持ちがいい。

 毎日がウキウキするほど楽しくて、力が漲っては出会う全ての人と楽しくおしゃべりをしている。

 そのため必然的になゆみの周りはどこに行っても賑やかになり、沢山の色々な国の友達にも恵まれた。

 大学のキャンパスは、一つの街を形成しているくらい大きくて、至る所に様々な生徒が散らばっていた。

 その中に紛れていると、自分も勉強しているんだと気分が高揚し、なゆみはこの場所にいるだけで嬉しくなっていた。

 目が合えば、見知らぬ人とでもハーイと声を掛け合うことも、なゆみにはたまらなく気分がいい。

 これがアメリカなんだと、満足していたのだが、ふと寄り添っている恋人達を見てしまうと、なんだか寂しい気持ちが表れた。

 そんな時、ここに氷室がいたらどんなに楽しいだろうとつい思ってしまう。

 ジンジャと別れて、それから気がついたのは、自分が心底氷室に心を奪われているということだった。

 困ったときに必ず手を差し伸べてくれた、懐の大きな存在。

 自分がふらふらしていると、必ずあの大きな手でしっかりと支えてくれた。

 それが安心感が芽生えて心地よく、そのまま甘えてしまいたいと心とろけてしまう。

 いつも守ってくれて、それは騎士のようで、逞しくかっこいい。

 氷室の存在の大きさを離れてからしみじみと感じていた。

 しかし、もう別々の道を歩いてしまった。

 氷室もきっと幸江と結婚をすることだろう。

 なゆみは決して戻ることのない日々を振り返らないように、カリフォルニアの太陽を体一杯に受けた。

「頑張らなくっちゃ」

 青い空に手を思いっきり掲げて体を伸ばしていた。