テンポラリーラブ物語

 また職場でも、氷室はけじめをつける。

 氷室は純貴に辞表を渡した。

「俺、今月一杯で仕事辞めさせてもらうよ」

「嘘だろ、コトヤン」

 氷室は純貴に説明する。

 自分のゆるぎない決意。

 それに向かって自分が進んでいること。

 全て手はずが整って、これから実行すること。

 洗いざらい話していた。

「そっか、やっと覚悟を決めたのか。それじゃ笑顔で見送るしかないじゃないか。まあ頑張れよ」

「うん、今まで本当にありがとうな。お前のお陰で色々と助かったよ」

「何を言ってるんだ。コトヤンの幸せ願ってるよ。結婚式には絶対呼んでくれよ」

「まだそれについての具体的なことは何も決まってないけど、でもそのときは是非来てくれ」

 二人は笑顔を交し合った。

「ところで純貴、お前もそろそろ落ち着いた方がいいんじゃないか。いつか取り返しの付かないことになるぞ」

「実はなもうすでになってたりするんだよ。今、妻と子供は実家に帰ってるんだ」

「おいっ、どうすんだよ」

「謝りにいくしかないじゃないか。許してもらえるかわからないけど。俺が言えた義理じゃないが、コトヤンはいい家庭作ってくれよ。やはりなんやかんやといっても結婚したらやっぱり女房には一番の情が湧くぞ」

 純貴の言葉は他人事のように軽々しく聞こえたが、彼が不意に目を伏せたとき、思いつめたやつれた部分が表れた。

 口では軽く言っても、本心は真摯に受け止めて、相当神経が磨り減ってるのかもしれないと氷室は察知した。

 何も言わずに純貴の肩に手を置くと、純貴は呆けた笑みを浮かべた。

 それが反面教師のように見え、自分はそんなことにはならないと、氷室も笑みを返していた。