テンポラリーラブ物語

 なゆみがアメリカに行ってから数週間過ぎた頃、氷室が仕事から帰ってポストを覗くと、そこになゆみからの絵葉書が届いていた。

 それを手にしてすぐに読むが、氷室はその内容に衝撃を受けていた。

 なゆみは氷室と違って毎日を楽しんでいた。

 氷室が苦しんでいるのも知らず、なゆみは日本の暮らしを忘れるほどにアメリカで元気に飛び跳ねている。

 全く住む世界が違ってしまった。

 氷室は忘却のごとく、過去の人にされたような寂しさを感じ、益々心を痛めてしまう。

 氷室はその絵葉書きを何度も読んでいた。


 Dear 氷室さん、お元気ですか。
 私は、元気で頑張ってます。
 待ってましたというくらい、ここについてからはじけまくりです。
 つい羽目を外しがちですが、それだけ毎日楽しいです。ほんと最高!
 停留場でバスを待ってるとすぐに声を掛けられたりもします。
 また電話番号とかも手渡されたり、モテたりもしてるんですよ(笑)
 すけべな人にはもちろん気をつけてますので安心して下さい。
 寝るのも惜しいくらい、本当に楽しい日々です。氷室さんも夢を諦めないで下さいね。
 斉藤


「ふざけやがって、なんだよこの葉書きは。俺の気持ちも知らないで。なんか腹が立ってきた。しかし、夢を諦めないで下さいか。俺の夢って一体なんなんだろうな」

 氷室はその絵葉書をじっーと眺めて、ふっと息を漏らした。

 これからどうすればいいのか、考えている。

 こうなってしまった以上何をすべきか、優先することはなんなのか、葉書きを穴が開くほど見つめながら氷室は考えていた。

 そして目覚めたように突然決意して、幸江に勢いつけて電話した。

「幸江さん、今から会えませんか。大事な話をしたいんです」

 氷室はぐっと腹に力を入れた。