テンポラリーラブ物語

「何もかも終わってしまった」

 その夜、氷室はベッドの上に横になり、キティのマスコットを目の前に垂らして見ていた。

 振り子のように揺らして、その揺れ具合をひたすら見つめている。

「あいつのリュックではいつもこうやって揺れていた」

 なゆみの姿が目に浮かぶと苦しさでキティをぎゅっと握り締めてしまった。

 自分が逃げてきたことへの結果を責めまくる。

 だったらもう仕方がないと、氷室は全てを受け入れた。

 これ以上苦しむのが辛すぎて、この思いから逃れたくて仕方がなかった。

 ベッドから立ち上がり、キティのマスコットを、物入れの引き出しの中にしまいこんだ。

 もうなゆみのことを考えないように、時が経てばこの思いもどこかへ飛んでいくことを願っていた。

 汗を掻いた服を脱ぎ、狭いユニットバスに入って、熱いお湯を出す。

 頭から勢いよくシャワーを浴びては顔を上げた。

 そのまま暫く熱いお湯をいつまでも顔で受けていた。

 そしてかつてなゆみに言った言葉を思い出した。

『ガキだね。どうせ告白もしてないんだろ。勝手に相手に好きな奴がいると一人で思い込んで、そして自分は悲劇のヒロインになって泣いてしまっただけだろ』

 このとき自分の言った言葉が、そっくりそのまま返ってきた。

 今までのツケが一気に訪れ罰が当たった。

 氷室は暫くお湯から顔を逸らすことができなかった。