テンポラリーラブ物語

 氷室はエスカレーターを駆け下り、ドアを突き破るようにビルの外に出て、大通りへと駆け出した。

 一刻の時間も無駄にはできないと焦る気持ちでタクシーを探す。

 無我夢中に走って空車のタクシーを見つけたときは、手でタクシーのボンネットを押さえ込むように捕まえた。

 息をはあはあさせながら、必死の形相で「空港まで大至急」と叫んだ。

 タクシーは氷室を乗せてすっと走り出す。

 ──間に合ってくれ!

 力が、ぐっと漲り、逃したくないチャンスに氷室は邁進する。

 胸がドキドキと高鳴っていた。

 運良くタクシーは渋滞などにも巻き込まれずに順調に走っていた。

 しつこく腕時計を見つめ、時間との勝負に氷室は間に合ってくれと心の中で何度も呟く。

 そしてなゆみに会った時を想像して、どのように何を言うべきか頭の中で整理していた。

 必ず会えると信じて、氷室は突き進んでいた。

 空港に着いた時は2時半を過ぎたころだった。

 間に合う!

 氷室はタクシーを降りて、国際線のフロアー目指して全速力で走り、なゆみの姿を求めて探し回った。

「斉藤、どのエアラインだ。カリフォルニアというのはサンフランシスコ行きなのかそれともロスアンジェルス行きなのかどっちなんだ」

 空港内は土曜日ということもあり人が多く混雑している。

 その間をもどかしそうに避けながら進んでいた。

 髪が短い女性を見る度、ドキッとするが、人違いだと分かるとがっかりする。

 氷室はどうしてもなゆみを探し出せないでいた。

 詳しいことを何も知らずに、どこのエアラインかも分からず氷室は焦りだした。

 携帯電話を取り出して、職場に電話を掛けた。

「純貴か」