テンポラリーラブ物語

「ごめん、ジンジャ、やっぱり私できない。私、このままじゃジンジャも傷つけてしまう」

 ジンジャはなゆみのTシャツの位置を戻して、起き上がった。

「ほら、起き上がれるか」

 ジンジャが労わるようになゆみの体を起こした。

 なゆみは泣きながらベッドの端に腰掛けると、ジンジャも寄り添って座った。

「ほら、泣かなくていいんだよ。もう分かってたよ。タフクが無理をしていることくらい。そして原因が氷室だってことも。奴が気になるんだろ。俺もそれは前から気にしていたことだったよ。 だけどそうじゃないって自分でも否定しているところがあったんだ」

「ジンジャ」

「荒っぽかったけど、これくらいしないとお前は絶対に自分の気持ちに正直にならないからな。俺は試したんだよ。タフクが本当に好きなのは誰かってね」

「えっ」

「俺ではタフクを繋ぎとめることはできない。一年待つとか行ったけど、俺にはお前を繋ぎとめておけないってわかったよ」

「ジンジャ、ごめん」

「何も謝ることはないさ。タフクと出会ってからはレッスン受けるのが楽しみだったし、タフクと話してたらすごく元気が出たし、いつもタフクのこと考えてたよ。またそれが心の中がふわふわして気持ちよかった。何が悪いって俺が一番悪いんだ。タフクの気持ち分かっていたのに、勇気がなくて行動に移せなかった」

「ジンジャ、私も楽しかった。ジンジャに構って欲しくて追いかけた自分にも満足して、恋をするって幸せだなって思ってた。ジンジャは私にとても大切なものを与えてくれた」

 二人は顔を見合わせて、お互いを思いながら笑顔を見せ合った。

 ジンジャは落ち着いた優しい眼差しをなゆみに見せて呟いた。

「俺たち、恋をすることを楽しんでいたんだろうな」

「恋をすることを楽しむ…… うん、確かにそれはあったと思う。ジンジャに恋をして私ほんと楽しかった」

「俺たちまた友達に戻ろう。タフクも俺なんかに縛られないで、アメリカでもっと自由にしてこいよ。タフクは自分の思うように飛び回って来い。俺はいつも明るく元気なタフクが好きだったんだよ。そうじゃないとタフクじゃない。俺が縛り付けてたらダメにしてしまいそうだ」

「ジンジャ…… ありがとう」

 二人は暫く英会話学校での思い出話をして、楽しかった日々を語り合っていた。

 これで終わりじゃなく、それぞれの出発の日としてお互いを見送ろうとしていた。

 なゆみとジンジャが寄り添ってホテルから出てきた時、二人はただお互いを思いやって歩いていただけだった。

 別れた後、気まずくなりそうなのを必死でそうじゃないと、お互い納得しようとしていた。

 最後まで好きだった気持ちを大切にしたくて、お互い傷つけたくなくて、あの時二人はかけがえのない思い出を一緒に分かち合ったと言い聞かせて別れていた。
 

 全てを知った時、いろんな感情が渦巻いて、氷室の体が震えていた。
 
 真実は氷室の心を揺さぶった。