テンポラリーラブ物語

 土曜日の朝、とうとうなゆみの出発の日がやってきた。

 氷室は益々不貞腐れてどんよりとしていた。

 何度も時計の針を見て、フライト時間を気にする。

 昼休み、氷室はあまりの落ち着きのなさにビルの中をうろつき回っていた。

 その時なゆみが通っていた英会話学校を思い出し、なゆみの面影を求めてふらりとその周辺を立ち寄った。

 二階のビルの角に位置し、昼間ということもあり人気も少なく、入り口は静かにひっそりとしている。

 覗こうにも不審者と思われても嫌なので、すぐその場を去ろうと踵を返した。

 そこでジンジャとばったり出くわしてしまい、氷室は思わず叫んでいた。

「伊勢君! こんなところで何をしているんだ」

「氷室さんこそ」

「今日は斉藤の出発日じゃなかったのか。どうして見送りにいかないんだ。一年も会えなくなるんだぞ」

「ああ、もういいんですよ」

 あまりにも軽々しい態度に氷室はカチンときた。

「どういうことだ」

「タフクが来なくていいって言ったから。それに俺たち、友達に戻ったんです」

「それって別れたってことなのか」

「うーん、なんていうんだろう。結果的にはそうなりますけど、お互い話し合って納得した上で決めたことなんです」

「それはいつの話だ。いつ別れたんだ」

 まさかの話に氷室は詳しく聞きたいと問い詰める。

「ずっと前に氷室さんが女性と歩いていて、そのときに偶然出会ったでしょ。あの後です」

「ちょっと、待った。お前、それって斉藤を弄んだってことか」

 氷室の顔が強張った。