テンポラリーラブ物語

 朝になり氷室は眠りから覚め、ぶるっと体を震わせた。

 どうやって帰って来たのか全く覚えてない。

 起き上れば、頭がガンガンと痛み出し、顔をしかめていた。

 歪んだ顔つきで辺りを見回し、暫くぼーっとそのままの姿勢でいると、なゆみの事を思い出した。

「斉藤……」

 一人闇雲に飲んでいた酒。

 なゆみと話すこともせず、別れの言葉もあいさつもなくそして何もかも終わってしまった。

「The End(ジ エンド)」

 氷室は映画の終わりを告げる最後のシーンのように呟いた。

「くそっ」

 自ら全てを放棄したとはいえ、二日酔いも影響してこの上ない最悪の気分だった。

 ベッドから起き上がり、狭い廊下へ出て、小さなキッチンに添えつけていた棚の中からグラスを取り出し、勢いよく蛇口から水を出す。

 それをグラスに注いで、ぐっと飲み干した。

 そのグラスをシンクに置いて、玄関の方を見れば、白いものがぼわっと小さく点のように目に入ってきた。

 なんだろうと下駄箱の上を見て、そこにキティちゃんのマスコットを見つけはっとした。

 それを掴み暫く呆然と見つめては、込みあがる感情が爆発し力の限りそれを握り締めた。

「斉藤が俺をここまで連れてきたのか」

 氷室は押さえ切れない思いに歯を食いしばる。

 どうすることもできない思いは、行き先を見失って体の中で固まっていく。

 まるでそれは石のように重く圧し掛かっていた。