テンポラリーラブ物語

 なゆみが感心して突っ立っていると、氷室は隣でぐずつき出した。

「暑い」

「あっ、はいはい。えっと、エアコンのリモコンはどこだ」

 氷室をベッドにひとまずごろっと置いて、なゆみはテーブルの上に目をやった。

 そこにはテレビ用ともう一つ小さなリモコンが置いてあった。

「これだな」

 ボタンを押すとピッと音が鳴り、バルコニーに続く掃出し窓の上の壁に設置されていたエアコンが動き出した。

 これで一安心とばかり、氷室を見ると、氷室は自分でシャツのボタンを全開にしていた。

 なゆみはドキッとしたが、氷室が酔いつぶれて寝てることをいいことに、引き締まったボディをしっかりと見てしまった。

 意外と筋肉質で、腹筋が割れている立派な体つきに感心していた。

 ここまできたら、なゆみは氷室のシャツをぬがせてしまった。

「氷室さん、酔いつぶれて女と密室に二人っきりになっても危ないですよ。私だったからよかったものの」

 なゆみは仕返しのつもりだった。

「ん? そっか好きにしてくれ」

 なゆみはつい笑ってしまった。

 しかしすぐにその笑いが消え、氷室を寂しげな瞳で見つめる。

「氷室さん、それじゃ帰ります」

 なゆみは最後に氷室の顔をよく見ようと近づいたとき、「斉藤」と小さく声をかけられた。

「はい、なんですか」

 なゆみは耳を近づけた。

「…… 側にいてくれ」

 その瞬間、氷室はなゆみをいきなり抱きしめた。