テンポラリーラブ物語

 最後に皆と一人一人居酒屋の店の前で挨拶をする。

「いつまでも友達だからね」

 ミナが別れるのが名残惜しそうに言った。

「向こうからも時々連絡頂戴ね」

 千恵も優しい笑顔で別れを惜しんでくれた。

「斉藤、アメリカ人にレイプされんなよ」

 川野らしい締めくくりの言葉だった。

 なゆみは最後だと、体に力を入れて耐えた。

「はい気をつけます。川野さんもどうかお元気で」

 棒読みだった。

 さすがに周りも引いていたが、川野だけはニヤついて空気が読めていないようだった。

「斉藤さん、元気でな。それじゃコトヤンのこと頼んだよ」

「はい。専務も社長にどうぞ宜しくお伝え下さい。本当にありがとうございました」

 本当にこれで皆とお別れだった。

 皆が去って行った後、なゆみは一度大きく息を吐いて、そして壁に背をもたれて立っている氷室を見つめる。

「それじゃ氷室さん。行きますよ。歩けますか」

 氷室の手を取って引っ張ろうとすると彼の足がふらつき前屈みに倒れてきた。

 それを必死になゆみは体で受け止めた。

「お、重い」

「斉藤」

「はい、なんですか?」

「トイレ」

「早く行って来て下さい」

 氷室はふらつきながらトイレへと向かった。

 これも同じシチュエーションだと、なゆみは苦笑いになった。

 まさか次、吐くってことはないだろうかと心配になってきた。