テンポラリーラブ物語

「おっ、コトヤン、今日はすごい飲みっぷりだね。最初から飛ばすじゃないか」

「ああ、喉が渇いていたからな」

 氷室がすぐに二杯目を頼めば、なゆみは過去の自分の姿と重なった。

「氷室さん、悪酔いしないで下さいよ。いつかの私みたいに」

 なゆみは自分で言ってしまって、ミナや千恵に突っ込まれて、笑われた。

 氷室は上の空で聞いていた。

 和やかな酒の席だというのに、氷室は輪の中に溶け込もうともせず、誰も入り込めない雰囲気を作って、一人で飲み続ける。

 体の大きな人はアルコールに強いだろうが、だからといって酔わないとは限らない。

 その量は自分で分かっているとは思うが、それを気にせず氷室はガブガブと流し込んでいるように見えた。

 それは手当たり次第に飲みまくり、酒を味わいながら楽しんでいる飲み方ではなかった。

 なゆみは気になって何度も氷室に視線を合わせたが、氷室は完全に無視してなゆみが気にかけていても気にする素振りもなかった。

 歓迎会で飲んだときと全く立場が逆になってしまっている。

 なゆみが側で心配した態度を取っていると、千恵もまたチラチラと二人の様子を見ていた。

 なゆみはウーロン茶しか飲まなかったが、それはそれで面白みに掛けると川野に突っ込まれた。

「斉藤、なんで飲まないんだ? 前はあんなに飲んで面白かったのに。最後なんだからもっと飲んだらどうだ?」

「私をまた酔わせたいんですか。もうお酒は懲り懲りです」

 あの時の事は笑い話で済ませられるが、思い出せば恥ずかしくなってくる。

 適当にあしらって、ウーロン茶を一口飲んだ。

 なゆみ以外、皆適宜に飲んで、気持ちよい酔い方をして楽しんでいた。

 しかし、そのテーブルの隅に座っていた氷室だけは、すでにできあがっているような酔い方をして、頭をふらふらさせて座っている。

 それでも飲みたらないと、氷室は空のグラスを持ち上げて、さらに酒を注文していた。