テンポラリーラブ物語

 送別会は歓迎会をしてもらった時と同じ店で予約を入れていた。

 新しい人もなゆみとあまり面識がないながらも、折角だからと一緒に来てくれた。

 どうせ送るのならたくさんの人に送ってもらう方が門出にいいと、川野が言い出した。

 川野は最後の最後で、生暖かくなゆみの肩に触れた。

 これももう最後だと思うと、なゆみは楽しく笑ってサービス旺盛に我慢するが、それが助長となって図に乗られてしまった。

「斉藤、飲んだ後は、ホテル行こ」

「嫌です」

 最後までこれも川野らしいから、怒る気にもならなかった。

 先に支店のみんなと、予約した居酒屋の前で待っていると、本店で働いている人が固まってこっちに向かってやってくるのが見えた。

 そこに一番背が高い人が居たことでなゆみはほっとした。

 氷室も一緒に来ていた。

 この時は、氷室の隣に座りたいとなゆみはつい願ってしまった。

「よっ、斉藤さん。今夜は主役だからね。また一杯飲んでね」

 純貴が声を掛けてきた。

 側には愛想良く笑った美穂もいる。

 この二人もまだそれなりの関係を続けているようだった。

 そこには他になゆみとはあまり面識のない本店のアルバイトが二人いたが、その中に奈津子の姿はなかった。

 なゆみより後に入りながら先に辞めていってしまった。

 入れ替わりも激しく長続きしない職場だが、なゆみもまた四ヶ月しか働かなかったのに、こうやって宴会の席を用意してもらえるのは感謝すべきことだった。

 前回と同じ奥のお座敷に案内され、懐かしくなってしまった。

 純貴と美穂と氷室は前回と全く同じ場所に座ったが、なゆみが氷室の隣に行こうか躊躇している間に、新しく入った女の子が何も知らずに氷室の隣に座ってしまった。

 なゆみは仕方なくその女の子の隣に座り、横には千恵とミナが続いて座った。

 結局なゆみは前回と同じ位置に座る羽目になり、目の前には川野がやっぱりいた。

 川野はニヤニヤとした顔つきでなゆみを見ながら、しょっぱなから「無礼講、無礼講」と言っては一人で盛り上がっていた。

 飲み物がそれぞれに運ばれた時、純貴がなゆみに労いの言葉を言って音頭を取ると、一同はグラスを持って乾杯する。

 なゆみは一人一人とグラスを重ね、そして最後に氷室にも積極的に自らグラスをぶつけた。
 
 しかし氷室の反応が鈍い。

 どうでもいいことのように氷室はなゆみとグラスを重ねた後、生ビールを一気に飲みだした。