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そして土曜日、なゆみの送別会の日がやってきた。
仕事が終わる時間を見計らって、閉店間際になゆみはもう一度店にやってくる。
手土産に、お茶のセットとお菓子も忘れず、支店、本店と二つ分用意していた。
先に本店に持っていき、ミナにそれらを渡し、横目でちらりと氷室の姿を見たが、氷室はこの時もやっぱり振り向いてはくれなかった。
氷室なら、足の怪我を気にして「膝小僧は治ったか」くらいは訊いてくれるんじゃないかと、なゆみはどこかで期待をしていた。
足の怪我は大したこともなく、カサブタになってる状態だが、氷室が手当てをしてくれただけに、そのことについて声を掛けてこないのは少し寂しかった。
ジーンズを穿いてたから、膝が隠れてすっかり忘れてしまってたのかもしれないが、仕事を辞めてから唯一この傷が氷室を思い出すものとなっていたので、家では見る度に氷室を感じていた。
仕事を辞めた者には、上司という役目も課せられず、義務が終了したということなのだろうか。
氷室がとても遠い存在のように思えてならなかった。
これが氷室との別れ。
それを現実に突き付けられ、あまりにも悲しい事実に胸が痛かった。
「じゃあ、ミナちゃん、私あっちで待ってるね」
なゆみは最後まで氷室のことが気になりながらも本店を出て行く。
その後で、氷室がなゆみの送別会に来てくれるのか確かめなかった事を気にした。
もう一度戻って確かめる気力もなく、なゆみは歯がゆい思いで去っていった。
その時、なゆみが去っていく姿をもどかしくなりながら氷室はしっかりと目で追っていた。
今更話をしたところでどうにもなるわけでもなく、このまま顔を会わせない方がいいと自ら無視を決め込んだ訳だが、それはいい訳で、本当は辛い思いをするのが嫌で逃げているだけに過ぎなかった。
なゆみの姿を見ること自体辛くなっている。
氷室は刻々と迫るなゆみとの別れに気持ちの処理ができず、心を閉ざしてしまった。
そして土曜日、なゆみの送別会の日がやってきた。
仕事が終わる時間を見計らって、閉店間際になゆみはもう一度店にやってくる。
手土産に、お茶のセットとお菓子も忘れず、支店、本店と二つ分用意していた。
先に本店に持っていき、ミナにそれらを渡し、横目でちらりと氷室の姿を見たが、氷室はこの時もやっぱり振り向いてはくれなかった。
氷室なら、足の怪我を気にして「膝小僧は治ったか」くらいは訊いてくれるんじゃないかと、なゆみはどこかで期待をしていた。
足の怪我は大したこともなく、カサブタになってる状態だが、氷室が手当てをしてくれただけに、そのことについて声を掛けてこないのは少し寂しかった。
ジーンズを穿いてたから、膝が隠れてすっかり忘れてしまってたのかもしれないが、仕事を辞めてから唯一この傷が氷室を思い出すものとなっていたので、家では見る度に氷室を感じていた。
仕事を辞めた者には、上司という役目も課せられず、義務が終了したということなのだろうか。
氷室がとても遠い存在のように思えてならなかった。
これが氷室との別れ。
それを現実に突き付けられ、あまりにも悲しい事実に胸が痛かった。
「じゃあ、ミナちゃん、私あっちで待ってるね」
なゆみは最後まで氷室のことが気になりながらも本店を出て行く。
その後で、氷室がなゆみの送別会に来てくれるのか確かめなかった事を気にした。
もう一度戻って確かめる気力もなく、なゆみは歯がゆい思いで去っていった。
その時、なゆみが去っていく姿をもどかしくなりながら氷室はしっかりと目で追っていた。
今更話をしたところでどうにもなるわけでもなく、このまま顔を会わせない方がいいと自ら無視を決め込んだ訳だが、それはいい訳で、本当は辛い思いをするのが嫌で逃げているだけに過ぎなかった。
なゆみの姿を見ること自体辛くなっている。
氷室は刻々と迫るなゆみとの別れに気持ちの処理ができず、心を閉ざしてしまった。



