テンポラリーラブ物語

「お前ここに座れ、消毒した方がいいぞ。ばい菌入って病気になって留学できないようになったらどうする」

「えっ? そんな大げさな」

「斉藤さん、コトヤンに手当てしてもらいな。そのままの格好で帰ったら、なんか恥ずかしいしさ」

 純貴に言われ、膝小僧を見つめると、血が垂れかかっていた。

「そしたら、俺は先に帰るね。コトヤン、あと宜しくね。それから斉藤さんもまた土曜日にね」

「はっ、はい。本当にお世話になりました」

 純貴はシャッターを潜って去っていった。

 なゆみはまた氷室と二人っきりになって少しドキドキと落ち着かない。

「ほら、突っ立ってないで、ここに座れ」
 
 しかしもうこれで最後だと思うと、素直に言うことを聞いた。

 氷室がいつも座っている椅子。

 そこになゆみが腰掛けると、氷室はしゃがんで救急箱から持ち出した消毒薬を遠慮なく振りかけた。

「痛ー」

「我慢しろ」

「本当にすみません。最後の日まで迷惑掛けっぱなしで……」

 氷室は黙々と手当てをする。

 最後の最後まであの大きな手にまた助けられてしまった。

 足にガーゼを当ててその上からテープでとめると、最後に「終わりだ」とぱんと怪我した膝小僧を叩いていた。

「痛ーい」

 それでも氷室は何も言わず、救急箱を整理して、それを棚の上に戻していた。

 なゆみも話す話題も思いつかず、暫く膝小僧を見つめていた。