テンポラリーラブ物語

 あんなに苦手だったのに、氷室を知れば知るほど氷室の優しさに触れていく。

 一人っ子で鍵っ子でもあったなゆみは、共働きの両親に放ったらかしにされて育ってきた。

 それは別に嫌ではなかったが、何でも一人で考えて自由気ままな毎日を送っては、人に頼るということなど考えたこともなかった。

 だけどいい子ぶって、いつも一人で解決しようとする癖がついてしまった。

 前向きな印象も与える反面、自分のことに関しては融通の利かない曲げられない性格でもあった。

 だが、氷室を前にしていると、道を正されているようで、大きな包容力で包まれている気分になる。

 それがとても心地いい。

 怖いことがあったあとでも、自然に笑みがこぼれていた。

 その笑顔につられ、氷室も照れて、少年のようにあどけなく笑っている。

 例えば、クラスの女の子から優しくしてもらって、戸惑いながらもありがとうとお礼を言って、痒くもないのに持っていきようのない思いを誤魔化すために、照れて頭を掻き毟っているような高校生の気分だった。

 無理に言葉を交わさなくても二人は落ち着きを払って、いい雰囲気を感じていた。

「私も氷室さんにいつかキッチンをデザインして欲しいな。私だけの使いやすいキッチン」

「例えば、どんな感じ?」

「私、背が高いから、シンクも高めにするの。色は明るくて楽しくなりそうなカラフルな感じで、収納箇所が一杯あっておとぎの国のような夢のあるキッチンがいい」

「まるで子供のおままごとみたいなキッチンだな」

「うん、そういうのがいい。大人になっても夢を忘れないようなもの」

 なゆみは隣の椅子に置いていた、リュックにぶら下がってるキティちゃんを何気に触れた。