テンポラリーラブ物語

 やがて、閉店時間が来てこの日は終わりを迎えた。

 終わってみれば、とても寂しくなってくる。

 客が入ってこないようにシャッターを素早く閉める氷室を、なゆみはもどかしげに見ていた。

「お疲れさん、もう着替えてくれていいよ」

 氷室が二人に向かって声を掛けた。

 控え室に入ると仕事が一つ残っているのに、なゆみは気がついた。

「あっ、まだ洗い物してなかった。すみません。すぐ洗ってきます。千恵ちゃん、先に着替えてて」

 ケーキを食べたときに使ったお皿と湯飲みをまだ洗っていなかった。

 後で洗いに行こうと思っていたのをばたばたとお客が続いてなゆみはすっ かり忘れていた。

「サイトちゃん、明日でいいよ」

 千恵が気を使う。

「でもちゃんと今日中に洗っておきたい。これは私の仕事だから。遣り残したまま終えたくない」

 責任感が強いなゆみのこだわりだった。

「わかった。俺が待ってやるから、倉石さんは着替えて先に帰れ。そしたら斉藤も気兼ねしなくてすむ」

 千恵はにこりと笑って、控え室へ入った。

 自分が居なくなればこの二人は一緒に居られる。

 そう思うとさっさと着替えていた。

「すみません。5分で済ませてきます」

 なゆみは食器と洗剤が入った洗い桶を持って超特急で走っていった。

「斉藤、慌てるな! 転ぶぞ」

 氷室が心配して声を掛けると、千恵はお似合いだとくすっと笑っていた。

 そしてさっさと控え室から出て、氷室に挨拶をして帰っていった。