「馬鹿やろう。勝手にくっつけるな。だけどお前達はくっついたみたいだな。結局はお前の騒ぎはなんだったんだ?」
「えっ、あれは、やっぱり私の勘違いでした。勝手に思い込んで一人で騒いでました」
「ふーん。雨降って地固まるでいいんじゃないか。でもお前はアメリカに留学だろ。その間どうすんだよ」
「ジンジャは待ってるって言ってくれました」
「よかったじゃないか。テンポラリーラブじゃなくて」
「えっ?」
「だけど1年は長いな。その間に伊勢君が浮気したらどうすんだ。帰って来たら新しい女がいたりして」
氷室の目が細まり、ほくそ笑んでいる。
なゆみは困ったように下を向いてじっと黙り続けていた。
氷室は自分の厭らしさにはっとして我に返った。
「ごめん、ちょっと意地悪になってしまった。俺の癖だ、許せ。伊勢君はお前のこと絶対待ってるよ。心配するな」
「違うんです。私がもし他の人を好きになってしまったらって思ったら何も言えなくて」
「はっ? どうした斉藤。一途なお前がそんなこというなんて。まさか他に気になる奴がいるとか」
「えっ?」
なゆみはドキッとして、思わず氷室の顔をじっと見てしまう。
「それがさっきのショーンとか言うんじゃないだろうな。倉石さんからも聞いたぞ。お前、結構もてるんだってな」
「いえ、滅相もない、そんなことありません」
「でもまだ二十歳だし、真剣な恋なんて考えられないのかもな」
「そんな。年なんて関係ないと思います。愛するって言う気持ちは年取らないとわからないんですか?」
なゆみはなんだかムキになってしまった。
「いや、そんなことはないけど、年取ってから愛だの恋だのってかなり慎重になりすぎて、寧ろ難しいもんだ。年取ってから恋に落ちるって冒険なんだぞ。だから若いうちは一杯経験積んでおいた方がいいっていう例えだ」
「それって氷室さんの経験談ですか?」
「えっ、なんで俺の経験談なんだよ。おいっ、お客さんだぞ」
氷室もまたドキッとしていた。
客が来たことで話が中断して助かってほっとしていた。
確かに32歳にもなって20歳の女の子に夢中になるほどの恋をするのは、氷室には冒険以上の戦いだった。
自分で言っておきながら、その通りだと動揺していた。
なゆみはアメリカに一年留学し、その長い間も待てると言うほどの彼氏もできた。
氷室はなゆみに隠れてため息を吐く。
本当にどうしようもない恋だと自分で自覚している。
一人店内の隅で、背中に暗い影を背負ってセンチメンタルになっていた。
「氷室さん! 氷室さんてば」
なゆみが呼んでいる。
自分の世界に入り込んでいた氷室は、我に返ってあたふたしだした。
「な、なんだ!」
「手伝って下さい」
振り返れば急にお客が増えていた。
氷室は急いでショーウィンドウの前に立ち、なゆみの隣に立って接客をしだした。
客が続く限り氷室はなゆみの側にいられた。
忙しいのも悪くなかった。
「えっ、あれは、やっぱり私の勘違いでした。勝手に思い込んで一人で騒いでました」
「ふーん。雨降って地固まるでいいんじゃないか。でもお前はアメリカに留学だろ。その間どうすんだよ」
「ジンジャは待ってるって言ってくれました」
「よかったじゃないか。テンポラリーラブじゃなくて」
「えっ?」
「だけど1年は長いな。その間に伊勢君が浮気したらどうすんだ。帰って来たら新しい女がいたりして」
氷室の目が細まり、ほくそ笑んでいる。
なゆみは困ったように下を向いてじっと黙り続けていた。
氷室は自分の厭らしさにはっとして我に返った。
「ごめん、ちょっと意地悪になってしまった。俺の癖だ、許せ。伊勢君はお前のこと絶対待ってるよ。心配するな」
「違うんです。私がもし他の人を好きになってしまったらって思ったら何も言えなくて」
「はっ? どうした斉藤。一途なお前がそんなこというなんて。まさか他に気になる奴がいるとか」
「えっ?」
なゆみはドキッとして、思わず氷室の顔をじっと見てしまう。
「それがさっきのショーンとか言うんじゃないだろうな。倉石さんからも聞いたぞ。お前、結構もてるんだってな」
「いえ、滅相もない、そんなことありません」
「でもまだ二十歳だし、真剣な恋なんて考えられないのかもな」
「そんな。年なんて関係ないと思います。愛するって言う気持ちは年取らないとわからないんですか?」
なゆみはなんだかムキになってしまった。
「いや、そんなことはないけど、年取ってから愛だの恋だのってかなり慎重になりすぎて、寧ろ難しいもんだ。年取ってから恋に落ちるって冒険なんだぞ。だから若いうちは一杯経験積んでおいた方がいいっていう例えだ」
「それって氷室さんの経験談ですか?」
「えっ、なんで俺の経験談なんだよ。おいっ、お客さんだぞ」
氷室もまたドキッとしていた。
客が来たことで話が中断して助かってほっとしていた。
確かに32歳にもなって20歳の女の子に夢中になるほどの恋をするのは、氷室には冒険以上の戦いだった。
自分で言っておきながら、その通りだと動揺していた。
なゆみはアメリカに一年留学し、その長い間も待てると言うほどの彼氏もできた。
氷室はなゆみに隠れてため息を吐く。
本当にどうしようもない恋だと自分で自覚している。
一人店内の隅で、背中に暗い影を背負ってセンチメンタルになっていた。
「氷室さん! 氷室さんてば」
なゆみが呼んでいる。
自分の世界に入り込んでいた氷室は、我に返ってあたふたしだした。
「な、なんだ!」
「手伝って下さい」
振り返れば急にお客が増えていた。
氷室は急いでショーウィンドウの前に立ち、なゆみの隣に立って接客をしだした。
客が続く限り氷室はなゆみの側にいられた。
忙しいのも悪くなかった。



