よりによって、こんなときになゆみとジンジャの食事風景を見ながらの見合いとは、氷室はとことん運の悪さを呪った。
それが不機嫌となり知らずと顔に表れてしまう。
テーブルの下で父親に足を蹴られなければ、自分でも気がついてなかった。
「どうも、すみません。息子はかなり緊張しているようでして」
氷室の父親は懸命にその場の雰囲気を良くしようとしていた。
「いえいえ、こちらこそ、急にお呼びしてしまって申し訳ございませんでした。コトヤ君とは一度お会いしたくて、ずっとその機会を願っていました。本当にお越し頂きありがとうございました」
見合いの相手の父親が気遣って話し出す。
布袋様のようにずっしりとして貫禄があった。
「コトヤ君は一級建築士の資格をお持ちだそうで、その噂はかねがねから聞いておりました。初めて会った時は小さかったのに、立派になられましたね。うちも小さいながら建築関係の会社を経営しておりますが、コトヤ君が自分と同じ職業を手にするとは思いませんでした。だけど、今はどうしてそちら方面のお仕事をなされてないのですか?」
面識があるようにぺらぺらと話してくるが、氷室にはあまりピンとこなかった。
「今は、充電期間として少し休んでおりました。これからまた復帰しようかと思っているところです」
表情だけは余所行きに、氷室は適当にあしらった。
「ああ、そうですか。それは素晴らしい」
何が素晴らしいんだと、突っ込みたくなりながら、氷室は愛想笑いを返していた。
「コトヤ、こちらは私が昔からお世話になってる方で、コトヤも覚えてるだろ。この方のお蔭で、今のお前があるんだから」
そんなこと知るか!と心の中では叫び、覚えてないが、
「その節はお世話になりました」
一応の礼儀は忘れなかった。
「コトヤさん、とても立派になられましたね。頭脳明晰とお伺いしてるし、そしてとてもハンサムでいらっしゃる」
今度は相手の母親が参加してきた。
どこかの旅館の女将のようなキリッとしたしっかり者の雰囲気があった。
「いえ、それほどでも」
「まあご謙遜なされて、オホホホホホ」
だいこん役者かというくらい、その笑いは不自然で芝居臭かった。
真ん中にいる女性は下を向いて恥ずかしそうにしながら、時々ちらちらと氷室を見ていた。
消極的でいつまでも白馬の王子様を待っているようなお嬢様という感じだった。
また父親がテーブルの下で足をこついた。
どうやら女性に話しかけろと指示を出している。
氷室は一度喉をコホンとならして、作り笑顔をつけて話しかけた。
「えっと、お名前は…… なんでしたっけ?」
今度は足を踏まれた。
その痛さに耐えつつ、氷室は恨みったらしく父親を一瞥した。
「すみません。息子は緊張しきって記憶にまで障害が…… 幸江さんでしたね」
父親はしっかりしろと氷室に視線を向けて対抗した。
「幸江さんのご趣味は?」
こういう時は無難な質問に限る。
作り笑顔を添えて、畏まって聞いてみた。
「はい、あの、お茶とお花を少々。コトヤさんのご趣味はなんでしょうか」
答え方もあまりにも型にはまりきってつまらなく、氷室はつい大きな欠伸をしてしまった。
それが不機嫌となり知らずと顔に表れてしまう。
テーブルの下で父親に足を蹴られなければ、自分でも気がついてなかった。
「どうも、すみません。息子はかなり緊張しているようでして」
氷室の父親は懸命にその場の雰囲気を良くしようとしていた。
「いえいえ、こちらこそ、急にお呼びしてしまって申し訳ございませんでした。コトヤ君とは一度お会いしたくて、ずっとその機会を願っていました。本当にお越し頂きありがとうございました」
見合いの相手の父親が気遣って話し出す。
布袋様のようにずっしりとして貫禄があった。
「コトヤ君は一級建築士の資格をお持ちだそうで、その噂はかねがねから聞いておりました。初めて会った時は小さかったのに、立派になられましたね。うちも小さいながら建築関係の会社を経営しておりますが、コトヤ君が自分と同じ職業を手にするとは思いませんでした。だけど、今はどうしてそちら方面のお仕事をなされてないのですか?」
面識があるようにぺらぺらと話してくるが、氷室にはあまりピンとこなかった。
「今は、充電期間として少し休んでおりました。これからまた復帰しようかと思っているところです」
表情だけは余所行きに、氷室は適当にあしらった。
「ああ、そうですか。それは素晴らしい」
何が素晴らしいんだと、突っ込みたくなりながら、氷室は愛想笑いを返していた。
「コトヤ、こちらは私が昔からお世話になってる方で、コトヤも覚えてるだろ。この方のお蔭で、今のお前があるんだから」
そんなこと知るか!と心の中では叫び、覚えてないが、
「その節はお世話になりました」
一応の礼儀は忘れなかった。
「コトヤさん、とても立派になられましたね。頭脳明晰とお伺いしてるし、そしてとてもハンサムでいらっしゃる」
今度は相手の母親が参加してきた。
どこかの旅館の女将のようなキリッとしたしっかり者の雰囲気があった。
「いえ、それほどでも」
「まあご謙遜なされて、オホホホホホ」
だいこん役者かというくらい、その笑いは不自然で芝居臭かった。
真ん中にいる女性は下を向いて恥ずかしそうにしながら、時々ちらちらと氷室を見ていた。
消極的でいつまでも白馬の王子様を待っているようなお嬢様という感じだった。
また父親がテーブルの下で足をこついた。
どうやら女性に話しかけろと指示を出している。
氷室は一度喉をコホンとならして、作り笑顔をつけて話しかけた。
「えっと、お名前は…… なんでしたっけ?」
今度は足を踏まれた。
その痛さに耐えつつ、氷室は恨みったらしく父親を一瞥した。
「すみません。息子は緊張しきって記憶にまで障害が…… 幸江さんでしたね」
父親はしっかりしろと氷室に視線を向けて対抗した。
「幸江さんのご趣味は?」
こういう時は無難な質問に限る。
作り笑顔を添えて、畏まって聞いてみた。
「はい、あの、お茶とお花を少々。コトヤさんのご趣味はなんでしょうか」
答え方もあまりにも型にはまりきってつまらなく、氷室はつい大きな欠伸をしてしまった。



