テンポラリーラブ物語


 なゆみとジンジャが氷室を見つめれば、視線は電波のように氷室に真っ直ぐ届き、氷室もすぐにキャッチしてそっちを見てしまった。

 なゆみとジンジャから見つめられ氷室はドキッとして、目を丸くした。

 二人がワイングラスを重ねている姿に驚きを隠せない。

 しかし、はっとしてすぐに顔を背け、見なかったように奥の席へとそそくさと向かっていった。

「タフク、あれ、氷室だろ」

「えっ、そ、そうかもね」

「そうかもねって、どうみても氷室だったじゃないか。なんであいつがこんなところに居るんだよ。あいつもなんかこっち見てびっくりしてたぞ。でも無視していきやがったけど」

「もういいじゃない。お互い知らないフリしてようよ。関係ないもん」

 無理をして言い切ると知らずと力がはいり、なゆみはぐっと体を縮こませた。

「まあ、そうだけど。なんか俺、あいつ見てたら腹立っちゃうんだ」

「ジンジャ、もういいじゃない。さあ、もう一回最初からやり直そう、ほら」

 さっきまでワクワクしてた気分が、一気に吹っ飛んでしまい、周りの空気の温度が下がったように、なゆみは寒気を感じた。

 やり直そうとグラスをもう一度重ねるが、軽かったワイングラスが重みを増して、ぶつかり合った音も鈍く聞こえた。

 なゆみは無理に笑顔を作り、楽しい気持ちを取り戻そうとそのワインを口にした。

 甘く飲みやすいワインを頼んだはずなのに、それはなゆみの口には合わなくて、どこかすっぱいきついアルコールの味が鼻と喉を締め付けた。

「ごほっ」

 なゆみはむせてしまう。

「おい、大丈夫か」

「ごめん、なんかびっくりだった」

 それはワインの味だけじゃなく、目の前に起こっていることも意味して完全に動揺していた。

 これは飲めない。自分には合わない味──。

 それでもなゆみはもう一度グラスに口をつけ、そして一口無理やり飲んだ。

 ぐっと喉が熱く締め付けられ、それは体の中へと流れていく。

 まるで火が体の中に注がれて、自分の中の何かが焼かれていくような感じがした。