テンポラリーラブ物語

 仕事が終わって、千恵と狭い控室で着替えていると、千恵は自分の化粧品を取り出した。

「サイトちゃん、折角かわいい服着てるからさ、ちょっとお化粧してみない?」

「えっ?」

「いいからいいから、私に任せて。すぐに済むから」

 千恵に言われるまま、なゆみは顔に色々と塗られていた。

 ソフトに肌を塗られるブラシがなんだかくすぐったい。

 千恵は慣れた手つきで、色々と施してくれた。

 壁に貼り付けてあった鏡を見れば、いつもより目元がくっきりしてメリハリができていた。

「ナチュラルメイクにしたんだけど、元の素材がいいから、ちょっと色づけるだけで、かわいさが引き立ったよ」

「ありがとう、千恵ちゃん」

 控室から出れば、川野がすぐさま反応し、また「誰とホテルにいくんだ」と言ってきた。

 まともに相手するのも面倒くさくて、適当にあしらって、そそくさと店を出てきた。

 千恵が気を遣って慰めてくれる。

「川野さんも相変わらずだからね。だけど、ああいう事言うのサイトちゃんにだけなんだよね。裏を返せば気に入っているんだろうけど、表現が露骨だからね」

「仕方がないです、あの人は」

 二人して笑うしかなかった。