テンポラリーラブ物語

 土曜日は5時で終わるため、通常より時間の経つのが早く感じる。

 客の入り具合も穏やかで、のんびりした雰囲気に包まれた。

 ちょうど川野が休憩を取って席を離れると、なゆみと千恵は羽を伸ばしてリラックスモードに入っていた。

 ショーケースの商品を整え、適当に暇を弄んでいると電話がなった。

 つい意識して、音の鳴る方を見つめてしまった。

 千恵が受け答えし、話の感じから本店に居るミナだとわかった。

 氷室ではなかったと思った時、肩の力が抜けていた。

 千恵が送話器の部分を手で押さえ、なゆみに話しかけた。

「サイトちゃん、今日、紀子ちゃんが夕方からこっちに出てくるんだって、それでミナちゃんが、仕事終わったら皆でご飯食べに行こうって。ほら駅前のホテルの中にある、できたばっかりのフレンチレストラン。ミナちゃん割引券持ってるんだって、それが今日までらしいから、みんなで一緒に行かないかって」

「あっ、ご、ごめんなさい。今日予定が入ってるんです」

「そっか急だもんね」

 千恵は送話器から手を離し、またミナと話をしてから電話を置いた。

「サイトちゃん、折角だから、仕事終わったら本店寄って、少しだけでも紀子ちゃんに顔を見せてあげてだって。次いつ会えるかわからないからね。それぐらいの時間だったらある?」

「うん。それなら大丈夫。だけど残念だな。あそこのレストラン、今話題になってるよね。高いけどすごく美味しいって、雑誌なんかでも紹介されてるの良く見かける」

「うん。私もすごく気になってたレストランだった。一度行ってみたかったんだ。だけど、サイトちゃん、今日は珍しくかわいらしいスカートの服だったよね。 一体どこに行くの? もしかしてデート?」

「えっ、いえ、その、友達と映画に」

「そっか、友達と映画か……」

 千恵はそれ以上聞かなかったが、目だけは何か言いたそうにしていた。

 『デート』

 この言葉の響きがなゆみには重くのしかかる。

 ジンジャとデート?

 そう言い切ることに違和感を抱いてしまう。

 何かが噛み合わず、しっくりとこない。

 しかしおしゃれをしてきた時点で、矛盾を感じてしまった。

 服装を気にして会うこと自体がデートを意識しているからじゃないのだろうか。

 なゆみはデートの定義がよくわからないでいた。