テンポラリーラブ物語

 千恵も川野も去った後、シャッターが閉まった店の軒先でなゆみは氷室を待っていた。

 行き交う人にじろじろ見られながら、しょぼんとしていた。

 ビルの角から氷室が走ってやってきたのを見た時は涙が出そうになっていた。

「悪い、待たせたな」

 氷室は必死で走ってきたのか、少し息が上がっている。

「氷室さん……」

 氷室を見た安心感から、張り詰めていたものが切れると、涙がジワリとこみ上げた。

「どうした、一体何があった」

 なゆみは唇をわななかせるだけで、言葉がでてこない。

「ほら、落ち着け。ちゃんと聞いてやるから、慌てるな」

 頼もしいばかりに、この時の氷室は大人の男だった。

 子供っぽく振る舞って、すぐに切れるかと思えば、なゆみの事を心配して優しく包み込もうとする。

 このギャップが激しいほど氷室のいい所が浮き上がり、それがなゆみの感情を揺さぶらせる。

 氷室の胸に飛び込みたい。

 そんな気持ちで、勢いつけて叫んでしまった。

「私、ひっかかりましたっ!」

「何に?」

「宗教に」

「はっ?」

 なゆみは氷室に怒鳴られると思って、身が少しすくんで目を閉じた。

 しかし氷室は真剣に聞いていた。