テンポラリーラブ物語

「あの、今日はもう遅いのでまた今度ということで」

 なゆみは逃げの体勢に入った。

 しかし、池上はそれもお見通しなのか、なゆみが断れないようにもっていく。

「あら、そうですか。じゃあ明日必ずまた来てくださいね。ジョンも待ってますから」

「ジョン……」

 なゆみは首をゆっくり動かした。

 隣にはジョンがにこっとして座っている。

 英語で多少の会話ができるからと、ついべらべらとなゆみは自分の情報を喋ってしまった。

 どこで働いてるか、店舗が入っているビルも知ってるし、店の名前も英語だから忘れてはいないだろう。

 逃げたところできっとジョンが柳瀬と一緒に店まで迎えに来るかもしれない。

 なゆみは困り果てた。

 池上カスミはなゆみが断りきれないと確信しているのか、余裕の態度でエレガントに席を立った。

「それじゃまた明日ね」

 どんなに美人で優しい笑顔といえど、それはどこか寒気を感じ恐怖心を植えつけられるような微笑だった。

 そしてジョンが話しかけてくる。