テンポラリーラブ物語


 それから一週間は何事もなく普通に過ぎていった。

 なゆみは注意されることも少なくなり、要領が分かってコツも掴んで順調に事が運んでいっているようだった。

 訳が分からなくて絶望を抱いていた初日が嘘のように、何も困ることはなく業務を一通りこなせるようになっていた。

 よく考えれば何も難しい仕事ではなかった。

 氷室とは挨拶をする程度の話しかしなかったが、なゆみは氷室が側にいることでどこか安心して働いてる気分を味わう。

 怖いという部分はすっかり消えていた。

 自分だけが知ってしまった氷室の本当の姿。

 他の従業員がそれを知らないと思うと、どこかそれが優越感のような特別な感情が芽生えてくるようだった。

 この頃になると氷室に対して親近感を覚えるところまで来ていた。

 まるでそれは飼いならされた犬みたいな感覚でもあり、少し慕いたくなってくる。

 それが自分でも不思議で、なぜそう思うのか考えようとするのだが、そうするとまだ気を許すなとどこかで心が急にストッパーを掛けてしまう現象が起こる。

 これ以上深く考えないようにと心が自然と締め出したようだった。

 どこかでまだ心を開ききっていない。

 そこにはジンジャへの気持ちがあったからかもしれない。

 ただ一つ、最近よく笑うようになった氷室の笑顔を見るのは、とても好きだとはっきり言えた。