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夕暮れの帰り道、いつもは彩香がいる私の隣に今は唯斗がいた。
私が見上げるほどの高さにある美形がこちらを見て微笑む。

なんて幸せなんだろう。
家は学校から徒歩20分位のところにある。
少しばかり遠いんだろうけど、今はその遠さも
苦じゃない。むしろ大歓迎だ。
いつまでもこの時間が続いたらいいのに、なんて思ってみるけど、あっという間に感じてしまう。

家まであと少しのところで先に口を開いたのは唯斗だった。


「俺さ、〇〇がよくうえからみてくれてんの、気づいてたんだよね。」

思いがけない一言に思わず声が上ずってしまった。

「えっ、あっ、知ってたの!?ま、毎日?」

「そうそう、毎日、朝早いのに見てくれてたよね。なんで?」

なんで?と聞かれても。
今更なんでかはよくわからない。
でも唯斗が好きだから、見ていたいから、唯斗が好きなことをしてるあの楽しそうな姿を。
これは、素直に言ってもいいのだろうか。
引かれたりしないだろうか。……

「ゆ、唯斗が楽しそうにしてる姿を、み、見るのが好き……だか、ら。」

「そっかぁ……ありがとう。嬉しいや」
予想外の答えに驚く私に彼は、はにかんで見せた。


ずるい、ずるいよ。
その ありがとう、も嬉しい、も全部私には都合よく聞こえてしまうんだよ。
胸が締まる思いがした。

気がつくと家の前にいた。 もうついてしまったのだ。隣で彼はいう。

「また、明日ね。」

明日、か。 今の私には待てる気がしなかった。
もし、明日、唯斗が学校に来なかったら?あえなかったら?
もし、明日、唯斗が誰かに告白されて、彼氏になっていたら?
もし、明日、…………