「ごめんね、築山。


冊子作り手伝わせて。」


「別に、俺が勝手にやったことだし。」


さっきより少し暗くなった道を築山と歩く。


実は築山と帰るのは初めてで、少しだけ緊張。


途中で話すこと切れたら沈黙に耐えられないし…


何て思っていたけど、話が途切れることはなかった。


普段は大して話さないくせに、今日は笑顔まである。


「何か良いことでもあった?」


あまりにも機嫌がよすぎるので、思わず聞いてしまった。


築山は間があって、「あぁ。」と頷いた。


「いいな~


私は放課後潰されて悲しんでるのに。」


「お前がいたから楽しかった。」


「何それ~、ちょっと嬉しいじゃん。」


お世辞でもそんなこと言われたら嬉しくなる。


少し上機嫌で歩いていると、築山がついて来てないことに気がついた。


「築山ー、帰んないの?


今日はそこで野宿?」


「なわけねーだろ。」


そう言いながらも立ち止まったまま。


「なに、どうしたの?


お腹いたいの?」


距離はそこまで離れてないはずなのに、築山の顔がよく見えない。


それは暗さと逆光のせい。


「立川、お前麻木が好きなんだよな。」


麻木という言葉に思わず反応する。


「好きなんだよな。」


否定も肯定もしなかった私に築山はもう一度聞いてきた。


その声はいつもより低い。


「ど、どうしたの当然…」


焦って少し声が震える。


「答えは?」


誤魔化すことはできない。


そう思った私は小さく頷いた。


「それでもお前が好きだって言ったらどうする?」


相変わらず顔が見えない。


でも声だけで本気だとわかる。


「あ…えっと…」


「困らせるのは分かってる。


返事はいつでも…とは言えない。


生憎待たされるのは嫌いだから。」


告白されるのは初めてではないはずなのに、心臓が今までにないくらい暴れていた。


「ごめん…私は俊が好きだから…」


今築山はどんな顔をしているんだろう。


どちらにしろうつむいているから顔は見えないけど…


「立川、お前の好きなやつを悪く言うようだけど、あいつはお前の気持ち知ってる。」


「…うん。」


あんなバレバレの態度で分からないほど俊は鈍感ではない。


「それでもあいつはお前の気持ちに答えてない。


何年片想いしてんだよ。」


「8年…かな…」


築山はどうしてこんなに聞いてくるんだろう。