春 〜Hikaru & Yuna〜

『待ってやばい本当に泣きそう。テレビだよ〜。また共演できるなんて思ってなかった』



makoは涙ぐんだ声で光の手を握った。



『ちょっと写真撮っとこ』



ポケットから自分のスマホを出して撮影する辺り、本当に自由人だなと思う。



『ね〜どお?
10年以上前だけど。久しぶりのテレビは』



光の顔がどアップに映し出されている。



『…変な気持ち』



『だよねぇ!
なんかね、聞いてこなきゃいけないものメモしてきたの。ちょっと待ってね』



身に付けていたポーチから紙切れを出して質問を開始する。


『まずはー。辞めてから今まで何してたのって。ゆっくりでいいよ。尺はまだまだあるから』



makoの独特なトークに笑う光。



『どう話せばいいんやろね。マコとも絶縁状態になったしね。なんか、全部なくなったよね。入院もしたし、とにかく辛い日々を送ったね』



BGMは流れず、光の声だけが聞こえる。



『仕事も友達も恋人も、気付いたら何もなくて。孤独って怖いなって今でも思うし、同時にやっぱり人間も怖くなったよね。
何回も死のうと思った。何のために芸能界入って、なんのために生きてんのかなって』



『うん…ずびっ』



本物のカメラマンがmakoと光をツーショットで映す。



『本当の意味で立ち直れたのは本当つい最近。嫌がらせも無くなったし、大事なものもできたし。疎遠になってた友達とも連絡取るようになって』



ー大事なもの。それはー



ナレーターが言うと、愛菜が映った。



顔出しNGで出演を許可した愛菜。



愛菜を抱き上げて幸せそうな顔でカメラに笑顔を向ける光。



ーそれは家族ー



『立ち直るまでの期間は決して綺麗なものではなかったけど、その過去があったからこそ今の奥さんに出会えて、子どもができて。生きててよかったなって思う』



『うん。次ね、一番辛かった出来事は…?これ別に答えなくてもいいよ。大人の決めたことだから嫌だったら話さないで』



makoは光の肩を撫でて真剣な顔を見せた。



『一番って、選べないくらいどの時期も辛かった。けど、強いて言うなら…失恋?
失恋って言うのか分からんけど、強制的に引き裂かれたあの頃は一番病んでた』



『うん…そうだね。体重も10キロくらい減ったでしょ』



『そうやね。もっと落ちてたかもしれない。
骨みたいやったなぁ』



『ずびっ…次はね、今、芸能界に戻って欲しいって、ファンの子達に熱望されたらどうする?』



『………もう、戻らんよ。一番はやっぱ家族やし。それに芸能界ってそんな甘い世界やないと思うしね』



『そっか。そうだよね。じゃあ最後に、奥さんに一言。カメラに向かって』



CMを挟んで光のどアップが映された。



『えー、俺が一番沈んでた時、たくさん傷付けて、我慢させて本当にすみませんでした。
これからは、俺が全力で守ります。
ここまで支えてくれて、本当にありがとう。
大好きです』




それを最後にVTRからスタジオに切り替わった。


VTRでも泣いていたmakoがスタジオでも泣いている。



つられて私の目からも涙が流れる。