春 〜Hikaru & Yuna〜

その日の深夜、目が覚めて隣を見ると光がいなかった。



ドア越しから光が漏れていたからリビングにいると分かった。



何をしているのか気になってリビングへ行った。


「あぁ、ごめん、起こした?」



リビングではスウェット姿の光が常温の水を飲んでいた。



『ううん、目が覚めちゃった。
眠れないの?』




「うん、なんかね。目が冴えちゃって」



『光って常温のお水好きだよね』



「好きっていうか、癖かな」



『癖?』



「芸能界にいた頃は口臭とか気にして水ばっか飲んでたんだけど、体を冷やしてもだめだから常温か温かいのを飲むようにってマネージャーに言われてさ。温かいの好きじゃないから自然と常温の水選ぶようになってて」



そうなんだ。




初めて知った。



あ、そうだ。



『あ、あと、光って地元こっちじゃないの?』




昼の関西弁。



「あ、うん。中3までは大阪を中心にその辺を転々としてた」



『そうだったんだ…。なんか、知らないことばっかりだね』



元カノのお母さんが向けた、全てを知ったような眼差しを思い出して切なくなる。




「時間はたっぷりある。これからでもいいんじゃない?」



『…うん。そうだよね。ごめんね、なんか嫉妬しちゃってた』



「嬉しいよ。結奈」